総移動距離1,400km。2010年にスイスを自転車と鉄道で旅をしました。Day2(1)は、サンモリッツからベルニナ峠まで自転車で70km走った記録(2010/10/03)
サン・モリッツを出発
10月3日(日)・St.Moritz~Passo del Bernina・天気/曇り 5℃(サン・モリッツ)~2℃(ベルニナ峠)
スイスの天気予報はあまりあてにならないようだ。いくつかの天気予報サイトがあるが、少しずつ違ったりする。地形が複雑なせいもあるようだが、峠ひとつ隔てて雨から晴れにも変わるらしい。ユースホステルの女性スタッフに聞いた天気予報どおりに「No Rain」なら良いのだが。
吐く息の白さから、気温は5~6度くらいだろうか。まだ夏日が続く東京から、いきなり真冬の寒さを覚悟していたが、これくらいの気温ならありがたい。日中は10度以上にはなるだろう。
今日は標高1,760mにあるサン・モリッツをスタートし、今回のツアーで最初の峠であるベルニナ峠(2,330m)にアタックし、その後イタリア国境を越えて、ティラノまでの約70kmをサイクリングする。復路は世界遺産のレイティッシュ鉄道・ベルニナ線で、サン・モリッツまでの車窓を楽しむという計画だ。
8時30分にユースホステルを出発し、サン・モリッツ湖畔の遊歩道を走り出した。まずはサン・モリッツ湖からその奥のスターツ湖を抜け、ポントレジーナを目指す。ポントレジーナまではリージョナルルート#65で、森の中を走る軽いダート道を走る。小さなアップダウンをいくつか越えると幹線道路29号に出た。これがこの日のサイクリングルートだ。
事前に調べた高低表では、サン・モリッツからベルニナ峠までは、約20kmの登りだ。途中、斜度が5~7%以上が連続するところも数ヶ所あるようだが、それくらいなら出発前にトレーニングした柳沢峠と変わらないだろう。
雲は厚いが、今のところ雨は降っていない。車の交通量も少ない。ベルニナ川に沿った谷あいの道路を我々は順調に進んだ。
モルテラッチ氷河の危機感
最初の目的地は、モルテラッチ氷河である。ベルニナ線モルテラッチ駅前から始まる遊歩道で、氷河の淵まで行くことができる。29号から脇道に入り10時過ぎにモルテラッチ駅に到着。
氷河までの約4kmの遊歩道は、バイクでも走ることができる。が、ところどころにかなり荒れたガレ石のダート道や急坂もあり、ロードバイクの我々はパンクに注意してゆっくりと走り、時々押し歩きをしながら、約30分で氷河の淵についた。
モルテラッチ氷河では、スイス気象台が氷河の状態を定点観測しており、この遊歩道の途中に西暦を記したポストが立ててある。
最初は1900年。遊歩道を進んで1kmほどのところにある。1900年にはここまで氷河がありましたよという記。現在その付近には低木が生え、林のようになっている。氷河が解けてから芽吹いた木だろうから、樹齢は若い。まわりの崖を見上げると、ほんの30mほどから上には木などなく、氷河が削り取った荒々しい岩肌が見えるだけだ。
標識はその後10年刻みで、2000年まである。2000年のポストは最初のポストから2,000m以上も後退している。そして2010年、現在、さらに2~300m後退したところに氷河の淵があった。
スイス全土でも同様に氷河の後退が進んでいるらしい。地球温暖化の影響(といわれている)をこんな形で目の当たりにすると、かなりの切実さが伝わる。だからエコな自転車がいいんだよ!などと軽々に言えないような、静かに危機感だけが迫ってくる。
濃霧のベルニナ峠へ
さて、モルテラッチ氷河にタッチした我々は、いよいよ峠へ向かった。峠まであと10キロほどだ。29号に戻ったとたんに急坂がきた。
森の中の狭い道路で10%前後の坂の波状攻撃が続く。やっとこなすうちに標高は2,000mに達し、あたりにはガスが濃く立ち込めてきた。もやの中に森林限界を超えた、樹木のない岩山の風景が広がっている。
ディアボレッツア駅を過ぎると、ゆるやかな上りが霧の奥に続いている。対向車がヘッドライトを点けている。この先はかなり霧が濃いのだろう。
途中で写真を撮ったり休憩しながら、ゆっくりと上っていく。トップはdaikooo、その後にtecchan、commuter、shinnxと続くのだが、だんだん距離が離れていく。このあたりで太腿が攣ってしまったのはshinnx。元気なのは年齢の若い順か。
右側にラーゴ・ネロ湖が見えてきたあたりで、29号は峠へ向かって左へ曲がり、それまで併走していたベルニナ線の線路と離れていく。もうすぐだ。
ここでshinnxが神頼みのようにMUSASHIのELITEを補給していた。実は今回のスイスツーリングに際して、commuterの友人であるMUSASHIの日本支社長のリバー氏からELITEとNIを提供していただいた。運動中の給水とエネルギー補給をするELITEと、運動後の疲労回復を促すNI。アスリートには常用されるほど有名な商品だが、我々が試すのは初めてだった。その効用はどうだったのか、後ほどご報告しよう。
峠の頂に近づくにつれ、丘を登る感じに緩やかになったが、そこまでに脚をかなり使っているし、空気も少しづつ薄くなっているのか、ただ単に脚力の問題なのか、3%くらいの坂がけっこうきつい。
13時ちょうど。ベルニナ峠に到着。10kmの距離を1時間30分かかった。2,330mのベルニナ峠は、視界50mも利かない濃霧の中だった。微かな霧雨が降っていたが、風が弱かったことがせめてもの救い。気温は2~3度だったろうか。水溜りには氷が張っている。真冬用のウエア装備だったにもかかわらず、手足の指先がかじかんでいた。
天気がよければピッツベルニナ山やピッツパリュ山などのベルニナアルプスの名峰が望めただろうに、残念。でも雨に降られるよりはマシ。それに、曇っていたせいで気温がマイナスにならずに済んだのかもしれない。もし快晴だったら、放射冷却というやつで一気に気温が下がり、峠道は凍結して封鎖されて走れなかったかも・・・。そう考えると濃霧でさえありがたく感じるもので、バイク乗りの思考はとても都合がよくできている。
こんな標高までバイクで上ったのは、メンバー全員が初めてのこと。もっともスタート時の標高が1,760mだから、実際の標高差は約600mなのだが、それでも到達した喜びは大きかった。
お約束の、峠の標識の前で記念撮影。おー、今見ても寒そうだ・・・・。
2日目の走行距離:約70km
text: shinnx photo: commuter, tecchan
コメントを残す